■ 空き家は今も増え続けている
現在の新設住宅着工戸数は、バブル期に比べ大きく落ち込んでいるとはいえ、滅失戸数を大きく上回っています。したがって、住宅戸数は増え続けているのが現状です。世帯数の増加より住宅戸数の増加のほうが大きいため、空き家が増加していくのは、自然な成り行きです。
また、ここ数十年で住宅の性能は格段に進化しました。耐震性能や断熱性能の向上、住宅設備の進化、新工法・新建材の登場など、日々新しくなっています。
新しい世帯が新居を構える際、中古物件のリフォーム費用と新築の場合の費用に大差がなければ、新築物件に流れるのは当然でしょう。築年数の古い老朽化した建物が空き家になると、そのままでは活用されにくい現状があります。
少子高齢化が進む昨今、今後しばらくは空き家が増加すると予想されます。
■ 放置された空き家が問題化する
所有者やその親族、もしくは委託された管理者等によって適切に維持管理されている空き家ならば問題化する恐れは小さいですが、放置されたままだと近隣住民等に迷惑がかかり、大問題に発展することもあります。
空き家が空き家でなくなるまでの間、適切に維持管理されているかどうかがポイントです。
- 強風や地震等による老朽化した屋根や外壁材の落下
- 老朽化などにより、むき出しになったアスベストの飛散
- 伸び放題となった庭木の越境や落ち葉の散乱
- ごみの放置・不法投棄などによる悪臭の発生や景観の悪化
- その他、放火のリスク、不審者の出入り、害虫や動物が居つくなど
■ なぜ放置されたままになるのか
空き家を利用・転用・処分できれば問題ありませんが、様々な理由によりそれが困難となる場合があります。このとき適切な維持管理が行われていない状態が続くと問題につながるのです。
なぜ、空き家が放置されたままになるのでしょうか。
原因は多様化・複雑化しており、比較的簡単に解決できるものから自分の意志だけではどうしようもない深刻なものまで様々です。
- 面倒くさい、思い入れがあって処分できないなど、精神的な理由
- 高齢者、体が不自由、認知症で判断できないなど、年齢的・身体的な理由
- 遠方に住んでいる、忙しいなど、距離的・時間的な理由
- 解体・リフォーム費用や管理費用がない、解体すると固定資産税の軽減措置が受けられないなど、経済的な理由
- 狭小地や不整形地で建物が売れないなど、市場価値の問題
- 現行の法律に合致せず建て替えができないなど、既存不適格の問題
- 所有者自体が不明である、所有者は分かるが行方不明になっている、相続放棄など、所有者不在の問題
- 相続後未登記のまま共有状態が続いている、法定相続人が把握できていないなど、相続未登記の問題
- 分譲マンションなどで所有者全体の同意が得られないなど、権利関係の問題
■ 法制度の問題
空き家問題の原因を考えると、日本の法制度が深く関係していることがわかります。
- 相続未登記の問題
- 相続放棄の問題
- 所有者が認知症になった場合、成年後見制度の問題
- 建築基準法における既存不適格の問題
- 区分所有法の問題
- 行政代執行の問題